スズキ目-Perciformes 掲載日2008年10月26日
ベラ科-Labridae

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 台風が関東地方を通過した数日後。房総半島のいくつかの漁港を訪ねてみた。想像していたよりも流藻の寄付きが少なかったものの、目的であるオクヨウジのほか、こちらと同じサイズのクロホシマンジュウダイを採集することができ、成果としては十分に満足のいくものだった。
 写真は帰り道に寄った某港で採集した「ギチベラ」だ。海面に浮いていたゴミに竿の先で触れたところ、ゴミの下から現れた。尾をやや曲げた状態であったため、当初はフグの幼魚を連想したが、体をよぎる白線が数本ハッキリと確認でき、すぐさますくってみると「ギチベラ」だったというわけだ。本来の生息域は奄美大島以南だから、海流などによって流されてきた個体なのであろう。ちなみに同じ日、磯ではやはりモチノウオ亜科のオビテンスモドキが採集されている。
 ギチベラは口を伸出させて小動物を捕食するほか、色彩に地域変異があることが知られている。本個体がどのような変化を見せるのか、ひじょうに興味深い。

ギチベラ 学名Epibulus insidiator


採集地:千葉県 採集日:2008年9月27日


採集地の状況漁港内 サイズ:1.5cm


採集:新野 大 さとう 俊 撮影者:荒俣 宏 Fish Databases of Japan >>
国内9機関のタイプ標本および7機関による25万件の標本を検索することができます。



スズキ目-Perciformes 掲載日2008年7月20日
クロホシマンジュウダイ科-Scatophagidae

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 クロホシマンジュウダイは世界に2属4種が知られ、本邦では1属1種のみ分布する。属名の「Scato」は糞食の意で、由来は人糞を食べる習性によるが、一般には雑食性であるようだ。

 分布域は、図鑑等によれば、紀伊半島以南とあるが、東京湾奥部や千葉県でも採集報告があることをここに記しておく。本個体は沖縄本島太平洋側の漁港で採集したもので、発見したときはオヤビッチャの稚魚の群れの中に混じっていた。一見して体高が高く、また頭部にオレンジの部分があることで、すぐに区別ができた。

 体形はチョウチョウウオに似て、また写真でも見て取れるとおり、チョウチョウウオ同様にトリクチス期を経て成長する。上から観察すると、頭部の両側に2本の角が張り出しているのがよくわかる。

クロホシマンジュウダイ 学名Scatophagus argus


採集地:沖縄県 採集日:2008年7月19日


採集地の状況漁港内 サイズ:0.8cm


採集・撮影者:さとう俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2008年5月18日
アジ科-Carangidae

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 台風が千葉沖を通過した数日後、外房の港を訪れた。岸壁近くには、流れ藻が大量に吹き寄せられていた。

 水面を目を凝らして眺めていると、「モジャコ」が見え隠れしているのがわかる。同様に流れ藻に集まる小魚をねらっているのであろう。早速掬って撮影してみたのが左だ。この個体のほかにも、大きいもので5cmのサイズが数個体確認できた。
 モジャコが養殖ブリの種苗として利用されるのはご存知のとおり。モジャコ漁の詳しくは、こちらのサイトを参照願いたい。
 モジャコは、夏(20cm前後)になると、流れ藻を離れ、内湾で生活。秋には外洋に出て、回遊生活に入る。
 

ブリ 学名Seliora quinqueradiata


撮影地:千葉県 撮影日:2008年5月18日


撮影地の状況漁港内 サイズ:3cm


撮影者:さとう俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2007年9月25日
ハゼ科-Gobiidae

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 2007年7月にパラオの磯魚調査を行った。その際に多く見られたのが左の Red-striped goby (レインフォーズ・ゴビー)だ。体型は沖縄や奄美大島にいるキンセンハゼによく似るが、もちろん本種は国内に生息していない。

 よく観察すると、全体的な印象がカザリキュウセンに似ていることに気づく。背鰭と尾柄部の眼状斑、体側に点在する白斑は、両種に共通する点である。同一地域内に両種が生息し、かつふつうに見られることを考慮すると、どちらかが擬態をしているのだと考えられないだろうか?

 Rovert F.Myers の Micronesian Reef fish によれば、砂地や泥地に生息するというが、調査した範囲では(砂地は言うまでもなく)、岩礁域にも多く見られた。砂地に生息するタイプよりも、岩礁域の個体のほうが色目的には濃いようだが、保護色のせいかもしれない。

 

Red-striped goby 学名Amblygobius rainfordi


撮影地:パラオ 撮影日:2007年7月18日


撮影地の状況リーフ内 サイズ:4cm


撮影者:さとう俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2007年6月20日
アジ科-Carangidae

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 ハリセンボンに寄り添って泳ぐカンパチの幼魚。早朝の漁港で撮影したもの。

 アジ科の幼魚は流れ藻や流木、ゴミの類につくほか、自分よりも大きな魚にともなって泳いでいる場合が多い。写真のような光景に出くわすのも、けっして珍しくはない。

 本種の幼魚は汽水域にもいて、しばしば川に入ることが知られている。以前さとうは川が注ぎ込む内湾を泳いでいたとき、ふと生きものの気配を感じ、振りかえってみると本種幼魚だったという経験をもつ。このときは金色に輝く体長3cmくらいの小さな個体だったが、人を恐れるどころか、手のひらの上で戯れる人懐こさを見せていた。

 高級食用種だが、このサイズまでなら観賞価値が高く、飼育も容易である。与える餌は何でもよく食べてくれる。ただし小魚などは丸呑みにしてしまう。その点はアジ科の幼魚に共通する難しさと言えるだろう。また魚病(白点病)にかかりやすいのも難点にあげられる。

カンパチ 学名Seriola dumerili


撮影地:鹿児島県 撮影日:2007年6月16日


撮影地の状況漁港表層部 サイズ:5cm


撮影者:さとう俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2006年11月19日
クロユリハゼ科-
Ptereleotridae

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 ハナハゼをはじめとしたグループは、以前はハゼ科とされていた。しかし1994年ネルソン(米)がオオメワラスボ科として分類。わが国では『日本産魚類検索』(2000年 第2版 中坊徹次編・東海大学出版会)でオオメワラスボ科とされた。その後英語版(2002年)では、Ptereleotridae に移され、2004年の『日本のハゼ』(瀬能宏監修・平凡社)で、Ptereleotridae に、クロユリハゼ科の和名が提唱されたという経緯をもっている。

 この個体は内湾奥部の砂泥域水深1mほどの場所に、小さな群れを作っていたもののうちの1尾。ちなみに上記の『日本のハゼ』によれば同様の場所にいることは稀とのこと。生息水深も8−25mとあるが、さらに浅い場所にもいることがこれでわかった。

 ふだんは小さな群れで、みな同じ方向を向いてホバリングまたは遊泳している。追うと散り散りばらばらに逃げるか、付近に点在する岩やサンゴの下に隠れる。

 水槽に収容当初は、しばらくは隠れて出てこないが、環境に慣れてしまえば飼育は容易。darts fishの仲間の例にもれず、いきおい良く泳ぐことがあるので、水槽からの飛び出しには要注意だ。

ヒメユリハゼ 学名Ptereleotris monoptera


撮影地:沖縄県 撮影日:2006年11月15日


採集地の状況砂泥域 水深1m サイズ:5cm


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スズキ目-Perciformes 掲載日2005年10月09日
ゴンベ科-Cirrhitidae

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 紀伊半島以南に分布する。ゴンベ科の中では大型種で、成魚では20cmを超えることもある。枝サンゴの間に生息し、小型の魚類や甲殻類を食する。生息深度は30m以浅。この画像は水深3mほどのショウガサンゴが点在する場所で撮影したもの。
 ゴンベの仲間は、胸鰭を羽のように広げて岩の上にとまっていることが多く、その姿がタカを連想させることから、Hokefishの英名をもつ。
 いっぽう栄川省造の「新釈魚名考」によれば、和名ゴンベの語源は「権兵衛」であり、長く伸びた背鰭軟条を 昔の幼児がしていた髪型後頭部にある一つまみの長い髪(これを「権兵衛」と称した)に見立てたものだとしている。
 ふだんはほとんど動かないが、接近するとサンゴの枝間や岩の隙間を這うように巧みに逃げて行く。みかけによらずなかなかのすばしこさである。大きな目をクルクルと動かす様はひじょうに可愛らしい。幾通りかのカラーバリエーションがあり、観賞魚としての魅力も十分だが、捕食性が強いうえに大喰らいのため、飼育する際には同居魚に注意をはらわねばならない。

ホシゴンベ 学名Paracirrhites forsteri


撮影地:宮崎県 撮影日:2005年9月16日


撮影地の状況岩礁域 水深3m サイズ:5cm


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スズキ目-Perciformes 掲載日2005年9月10日
ベラ科-Labridae

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 豹柄模様が特徴だが、ごく小さなステージではさほど明瞭ではない。むしろ背鰭、尻鰭軟条部にあるチョウチョウウオ風の眼状斑のほうがよく目立つ。 かつて「ゴイシベラ」と呼ばれていた時期があり、ベテラン・アクアリストにとっては古い呼称のほうが通りが良いのではないか。
 沖縄諸島の岩礁域では頭を左右に振りながら索餌している姿が見られる。2cm程度の個体なら比較的容易に採集できるが、5〜6cmともなると、そうやすやすとは捕まってくれない。本州中部以南にも分布する。ただし数は少ない。
 餌付きは悪くはないが、長期飼育が難しく、いつの間にか水槽から姿を消してしまっているのがふつうだ。今回はミジンコで餌付け、徐々にホワイト・シュリンプに移行した結果、やせることなく維持できている。サイズも1.5倍ほどに成長した。今後どのように斑紋が変化していくか、おおいに楽しみである。
 意外に気の強いところがあり、似たような斑紋の魚には種を問わず敏感に反応する。相手が自分よりも大きくても、猛然と突っかかって行くほどだ。
 

ノドグロベラ 学名Macropharyngodon meleagris


採集地:沖縄県 採集日:2005年6月18日


採集地の状況ごろた石地帯 水深1m サイズ:1.5cm


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フグ目-Tetraodontiformes 掲載日2005年07月07日
カワハギ科-Monacanthidae


写真1 写真2
水中写真 水槽写真

写真3 写真4
水中写真 まだら模様(水槽写真)

写真5 写真6
シマキンチャクフグ若魚
(水槽写真)
シマキンチャクフグ若魚
(水中写真)


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  ごく小型のカワハギで、西部太平洋の熱帯部にひろく生息するが、数はあまり多くない。1cmをやっと越えた稚魚でも餌をよく食べ、かわいらしい魚なので、水槽飼育に適している。とくに夜間、水槽の岩や海藻に口を付けて眠る習性がおもしろい。ただし、そう簡単にみつかる魚ではなく、これに良く似たシマキンチャクフグの多さにくらべると、十分の一以下の出現率しかない。丹念にさがそう!
 これまでノコギリハギを発見したのは、北から、神奈川県佐島のアマモ場(幼魚、水深1m)、東京都八丈島(幼魚、ごろた石磯、水深1m)、伊豆半島西部(幼魚、アマモ場、水深1.5m)、鹿児島県奄美大島(成魚、幼魚、さんご礁、水深50cm)、沖縄県石垣島(成魚、幼魚、さんご礁、水深1m)であった。関東では夏に幼魚をみかけるだけだが、奄美大島以南ではフルシーズン見ることができる。
 本年6月、わたしたちは沖縄県の潮通しのよいごろた石の海岸で1-3cm内外の稚魚を多数観察する機会を得た。この観察から、すくなくとも沖縄周辺のノコギリハギは5月頃産卵し、極少稚魚が6月に磯に定着するものと思われる。現場はハマサンゴがところどころにあるだけの殺風景な磯で、枝状のミドリイシはなかった。藻類が茂る岩陰が散見され、稚魚はその周辺に隠れていた。こまめに探すと、磯のあちこちで姿をみかけることができた。その数、約一時間の採集で6尾。これだけ多いのは初めての体験だった。(
写真1〜3参照)
 稚魚は岩陰や藻の中に隠れる以外、遠くへ逃げることがないため水中撮影もきわめて容易だった。色彩は、ごく小さいものや藻の中にいるものは褐色に黄金色の斑点をちらしたまだら模様が多い(
写真4参照)。この色は夜間に出す色でもある。一方ハマサンゴの陰にいるものはシマキンチャクフグと同じ黒い横縞をあざやかに発色していた。そこで気づいたのは、ちかくにシマキンチャクフグの幼魚も成魚もいないという事実だった。6月はシマキンチャクフグの成魚は多いが幼魚はみかけない。これがでてくるのは7月にはいってからである。ひょっとするとノコギリハギは、本物のシマキンチャクフグ稚魚が磯に現れる以前に磯を占領し、餌をたくさんとる戦略を実行しているかもしれない。本格的にシマキンチャクフグが出てくれば、ノコギリハギは餌場から駆逐されかねない。しかも、これだけノコギリハギの稚魚がいるこの磯に、シマキンチャクフグは成魚、幼魚を問わず、全くみかけない。(参考:写真5、6
 ふつう、ノコギリハギは毒をもつシマキンチャクハギに擬態している、といわれる。一日採集してみたが、わずかにハナキンチャクフグが一尾いたのみであった。とすると、両者はほんとうに擬態関係にあるのだろうか。これをたしかめるためには磯での観察がさらに必要だろう。
 参考までに、おもしろい事実を紹介しておく。アンダマン海のプーケット島に生息するノコギリハギ近似種Paraluteres spは、みごとなくらいシボリキンチャクフグまたはゴマフキンチャクフグに似ている。つまり、この海域のノコギリハギは、シマキンチャクフグと同じキタマクラ属の他種にそっくりの色彩をしているのだ。両方の属に擬態関係が成立している証拠になるかもしれない。


■ノコギリハギ 学名Paraluteres prionurus


撮影地:沖縄県 撮影日:2005年6月20日


採集地の状況ごろた石地帯 水深1m サイズ:1.5cm


撮影者:荒俣 宏  さとう 俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2005年06月25日
ハゼ科-Gobiidae

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  この5月に奄美大島で採集したハゴロモハゼのペアは、ちょうど産卵時期にはいっており、メスはすでにおなかがはちきれんばかりにふくらんでいた。さぞやいい卵を抱えているのだろう。これを見たオスの発情ぶりがまたすさまじく、色彩をかがやくような黄褐色に変え、尾ひれは青と赤の発色がすばらしい。さかんにメスをさそい、ひれを目いっぱいひろげて美しさをアピールする。この発情行動は一瞬でおわり、おなじことを何度となく繰り返す。メスもそのうちに発情し、オスと同じように全身を張り切らせ、まるでサケの産卵ポーズのように口を大きく開ける。自然の営みの神秘を感じ、最初に見たときはあられもないシーンに感動してしまった。ぜひ写真を参照してほしい。決定的な瞬間をおさめた!!
 この行動が始まってから一週間たつ。いまはその最高潮で、発情を数時間おきに繰り返している。実際の産卵は泥底にテッポウエビがあけた穴のなかで行われるはずである。そのために親の行動が観察できないが、おそらく親が卵を守り孵化まで世話を焼くものと思われる。次は穴の中が観察できるような幅の狭いガラス水槽をセットし、そこにテッポウエビに穴を掘らせる作戦である。親が卵を守るシーンが見られたら、すごいだろうなーーー!!カメラ片手にしばらくは観察を続けるつもり。続報をまて!

■ハゴロモハゼ 学名Myersina macrostoma


採集地:水槽写真 撮影日:2005年6月25日


採集地の状況:泥地 水深50cm サイズ:5cm(オス)、3.5cm(メス)


撮影者:荒俣 宏 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2005年06月14日
ウバウオ科-Gobiesocidae

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 ガンガゼのトゲの間にすむことで有名なハシナガウバウオの1 cm未満の稚魚が採集できた。この稚魚を採集したのは、底物と極小稚魚の採集に力を入れてきた新野氏だが、さすがの氏もこれほど小さな個体を発見したのははじめてだったそうだ。稚魚には成魚のように黄色い線も長いくちばしもないが、採集して数日もすると頭に特徴的な黄線があらわれた。おそらく同定は間違いないものと思う。このような小さな個体の写真が公開されるのは初めてではないだろうか。
 ハシナガウバウオは内地の紀州でも採集できるが、流れのある水の透明な場所で、ガンガゼがいるところがおおい。しかし、奄美大島ではむしろエダサンゴの中や岸壁の隙間にいて、外にもよく出てくる。ガンガゼがまったく見当たらない場所にもふつうにいる種類である。
 しかし、ハシナガウバウオの飼育はきわめてむずかしく、何を餌にしているのか解明できていない。フィールドではサンゴや岩の隙間にいて、付着生物を餌にしているようだ。水槽内では何も与えなくとも数ヶ月は生きるのだが、次第にやせ細り、ついに消滅してしまう。リーフ水槽に収容すれば飼育に成功するかもしれない。生態的におもしろい種だけに、長期飼育に努力したい。

■ハシナガウバウオ 学名Diademichthys lineatus


採集地:鹿児島県 撮影日:2005年5月8日


採集地の状況:サンゴ礁域 水深1m サイズ:8mm


撮影者:荒俣 宏 (採集者:新野 大) Fish Databases of Japan >>
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トゲウオ目-Gasterosteiformes 掲載日2005年06月9日
ヨウジウオ科-Syngnathidae

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 ヨウジウオの仲間のうち、まるでちいさなヘビのように岩の斜面を這いまわるグループがいる。しかし、ヘビのように不気味ではなく、目もまるくて大きい。くちばしは小さくて細いので、オモチャの子ワニのようにも見える。この仲間の代表格はイシヨウジだが、もっとも美しいのはこのオビイシヨウジだろう。からだに横縞が順序よく巻いており、うすい黄色を帯びた地肌に、目のすぐうしろから濃い紫色の縞がはしる。尻尾ちかくではこれが鮮やかな紅色の縞に変わり、小さいけれど純白の 扇形をした尾ひれでおわる。
 しかし、オビイシヨウジは、他のイシヨウジ類と異なり、明るい岩の表面へは出てこない。岩の隙間をたくみに這いまわるため、いっそう目につかない。しかし、東京都八丈島と紀州、そして奄美大島の浅い磯には、よく探すとかなりの数が発見できる。とくに夏は抱卵したオスが採集できる。奄美大島では、はやくも5月に卵を抱いているオスをみつけることもある。採集は奥深い岩場に逃げられると厄介だが、静かに追えば高い確率で捕まえられる。
 かわいらしいオビイシヨウジだが、きわめて神経質なため、他の魚が混泳する水槽ではほとんど生き延びられない。餌を食べることも下手で、プランクトンよりは岩やサンゴに付いた藻類やゴミなどをついばんでいるほうが多い。そのため、なるべく生物の付着した岩を入れておいてやるのがいい。ちなみに、採集したこのペアは静かな環境で飼育しているため、すでに2ヶ月以上健康に生きている。落ち着いた環境を用意すれば、微生物などを食べて元気に生きる。

オビイシヨウジ 学名Corythoichthys amplexus


採集地:鹿児島県 撮影日:2005年4月9日


採集地の状況:サンゴ礁域の岩場
            くぼみの奥にペアで発見
            水深1m
サイズ:5cm


撮影者:荒俣 宏 Fish Databases of Japan >>
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フグ目-Tetraodontiformes 掲載日2005年06月4日
フグ科-Tetraodontidae

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 主にサンゴ礁域に生息するフグ。2002年の夏に、南紀の浅瀬で採集したことがあるが、関東近辺では見たことがない。伊豆あたりではダイバーによって幼魚が目撃されているのに、採集例を聞かないのが不思議だ。
 体型、模様ともシマキンチャクフグに似るが、オレンジ色の小斑紋が全身に浮かび、美しさではあきらかに本種に軍配が上がる。もし2種が並んでいたら、多くの採集家は本種のほうを追いかけるにちがいない。その意味ではハコフグとミナミハコフグの関係によく似ているといえるだろう。ちなみに両種の見分けかたを下記にご紹介しておく。
 採集は容易。餌付けも難しくないが、こまめな給餌を怠るとやせてしまう。
イラスト:さとう 俊

ハナキンチャクフグ 学名Canthigaster coronata


撮影地:鹿児島県 撮影日:2005年4月9日


撮影地の状況:サンゴ礁域 水深1m サイズ:5cm


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フグ目-Tetraodontiformes 掲載日2005年05月17日
フグ科-Tetraodontidae

上:オス 下:メス
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 小型で美しいキンチャクフグの仲間。かつては八丈島や与論島の浅瀬でかなり採集できたが、いまはあまりみかけなくなった種で、おそらくサンゴなどが減ったことや岩場の環境が悪化したためと思われる。よく目につくシマキンチャクフグに比べると小型でおとなしく、岩だなやサンゴの陰に隠れていることが多い。臆病な性格で、網を向けると岩の裂け目に隠れこむ。5月の大潮の昼、タイドプールの岩だなにヒバシヨウジウオをもとめていたところ、本種のペア(オス・メス)を発見した。逃げる際も二匹いっしょに行動し、むりに分かれさせてもやがて接近することから、つがいであると考えられる。
 
オスは一回り大きく、色彩もあざやかだった。とりわけ、背びれの付け根に青くふちどられた黒斑があることと、口のあたりがスポットでなくライン状の模様がある点が、オスの特色である。メスはおおむねシンプルなスポット模様をしている。雌雄ともに尾ひれに特別な斑紋がないので、近似のゴマフキンチャクフグC.amboinensis やシマキンチャクフグの一種C.solandriと区別できる。

 水槽内でもつがいをかたちづくり、いっしょに行動することが多い。おびえやすいが、慣れるのも早く、
餌には隠れながらも反応しそとへ探しに出てくる。動作が鈍く、物陰からじっとこちらをみつめる目つきがいじらしい。丈夫で長生きする。大きさから見て、この二匹は成熟した成魚だろう。産卵行動や婚姻色があらわれれば、また報告したい。


シボリキンチャクフグ 学名Canthigaster janthinoptera


撮影地:鹿児島県 採集日:2005年5月9日


採集地の状況:タイドプール 水深1m サイズ:5-6cm


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スズキ目-Perciformes 掲載日2005年04月24日
ハゼ科-Gobiidae

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水面に浮かび、静止すること十数分。あたりを警戒しつつ穴(右下)から出てきたところを逃さずとらえた画像。残念だが、テッポウエビとのツーショットは撮れなかった。

雌雄いずれも第1背鰭棘と鰭膜が著しく伸張するのが本種の特徴。見分け方は尾びれの形状による。雄のそれは大きな三角形で、雌は後縁が丸みを帯びる。とすると、写真はおそらく雌であろう。 ところで、われわれが観察するのはせいぜい4cmどまり。婚姻色を呈した雄の成魚に遭遇したことは、悔しいことに、今まで一度もない。季節によるものなのか、それとももっと深みにいるのか?ぜひとも知りたい。

共生ハゼは驚かすとすぐに隠れてしまう。加えて本種の棲む環境は底が泥地である。ただでさえ透明度が低いうえに、泥煙を残されてはかなわない。撮影するには、用心深さと根気よさが要求される。時間帯もポイント。潮が引き始めたころがベストだ。


ハゴロモハゼ 学名Myersina macrostoma


撮影地:鹿児島県 撮影日:2005年4月9日


撮影地の状況:泥地 水深1m サイズ:3cm


撮影者:さとう 俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2005年01月30日
ハゼ科-Gobiidae

 
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 体長3cmほどの小型のハゼ。岩の割れ目や穴などに生息する。写真のように、壁や天井に張り付いていることが多く、底に静止している姿はほとんどみかけない。しばしば逆さの姿勢のまま泳ぎ出て、また元の場所に戻る行動を繰り返すが、これは浮遊するプランクトンなどを捕食するためのもの。上から舞い落ちてくる砂粒を餌と間違え、いったんは口にするものの、すぐに吐き出すさまは滑稽である。
 ほぼ同じ環境に、タテジマヘビギンポやベンケイハゼがいる場合がある。日の当たらない岩棚の下では判別も難しいが、ジッと我慢をしつつ見極めるのもまた楽しい。近似のチゴベニハゼとは、第1背鰭第2棘が糸状に伸張しないことなどで区別ができる(下図参照)。

イラスト:さとう 俊

ベニハゼ 学名Trimma caesiura


撮影地:沖縄県 撮影日:2004年05月08日


採集地の状況:水深1m タイドプール サイズ:3cm


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スズキ目-Perciformes 掲載日2005年01月22日
ハゼ科-Gobiidae

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遠目にはシノビハゼと酷似するが、頭と背に鞍状斑が並ぶため、全体的に黒っぽい印象を受ける。体腹側に多数の黄色横線が入るのもシノビハゼとのおおきな相違点だ。

 写真は、シノビハゼをはじめダンダラダテハゼ、フタホシタカノハハゼ(黄化個体を含む)、ハチマキダテハゼなど多種の共生ハゼが棲む内湾最奥部の泥底で撮影したもの。警戒心がさほど強くないせいか、シャッターチャンスに困ることはなかった。

 じつを言うと、シノビハゼを撮ったつもりだったのだが、後日画像をあらためてみるとどうも雰囲気が違う。そこで「決定版 日本のハゼ」で精査してみたところ、なんとオビシノビハゼだったというわけだ。ふだんわれわれがシノビハゼとしてやりすごしていた個体も、案外この種だったのかもしれない。
 

オビシノビハゼ 学名Ctenogobiops aurocingulus


撮影地:鹿児島県 撮影日:2004年10月26日


撮影地の状況:泥地 水深1m サイズ:5cm


撮影者:さとう 俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年12月6日
エボシダイ科-Nomeidae

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 「エボシダイ」で思い出されるのは、やはり内田恵太郎のエピソードだろう。名著「稚魚を求めて」に書かれた件(くだり)は、採集家でなくともワクワクしてしまう物語だ。その珍魚エボシダイを採集!の報があったので、お知らせしておきたい。

 採集場所は静岡県の漁港。幼魚は通常「カツオノエボシ」につくとされるが、今回は船が数隻とまっている隙間の水面に、単独で浮いていたという。周囲にクラゲらしきものはなく、流藻か他の漂着物に付いていたものであろう。

 採集者によれば、
 「下の大きなヒレは動かさず、パタパタと空を飛ぶように泳ぐ」
とのこと。本種の飼育に関する情報はきわめて少ない。ぜひとも経過を知りたい。

本書参照ページ:P185

エボシダイ 学名Nomeus gronovii


採集地:静岡県 採集日:2004年11月28日


採集地の状況:漁港の水面 サイズ:4cm


撮影者:考えるなつ(Handle) Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年11月29日
ハゼ科-Gobiidae


上:雄 下:幼魚
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 前(下)2種と同一場所で採集した。このような砂泥地は奄美南部にかなり見かけるにもかかわらず、これまでの採集場所ではついに本種を確認できなかった。しかし、台風で大荒れの日、湾の最内奥にある池のように波静かな泥底の海岸をみつけ、期待せずに海にはいった。ところが、そこは意外にもハゼのパラダイスであって、初めて見るケショウハゼに驚かされた。ケショウハゼは水深50cmから1mあたりの砂泥に深いすり鉢型の穴を掘り、その斜面にじっとしていた。巣穴の大きさは直径20cmほど、深さも20cm以上あり、共生ハゼのすむ小さな穴とは異なる。どのように掘るかは観察できなかったが、穴の斜面に貼り付いており、棒切れなどをそっと穴に差し込むと、共生ハゼのように穴の奥へは逃げ込まず、音もなく、滑るように穴の外へ出て行く。そして砂面のすぐ上あたりで止まるのだが、その際、黄色味をおびた腹ひれを膨らませるように横へ広げる動作がおもしろい。追えば、どんどん先へ逃げていく。化粧をしている姿にたとえられた和名からもわかるように、多彩な側扁した体をもつが、 穴の斜面に止まっているときは白黒まだらの地味な背面しか見せない。そのため、偶然の機会に美しい体色があらわれるまで、ケショウハゼがいるとはまったく気づかなかった。このように、磯採集は、磯を見る目を変えると今まで気づかなかった 生物がいきなり見えるようになるものである。ケショウハゼはまさにその典型で、横から見て初めて、赤や青の斑点の美しさを発見できる。なお、メスは各ひれが薄い赤一色なので、容易に見分けられる。幼魚はマダラハゼのように地味である。またオスの成魚は7cmほどに達し、じつに豪華で美しい。幼魚とオスメスが同じ巣穴に同居しており、干潮時はこの穴が水溜りのように転々と海岸に残る。これを手で掘ってみたら、幼魚が採集できた。飼育下では、やはり滑るような静かな泳ぎを見せ、窪みをつくる。しかし、巣穴を掘ることなく岩の下に隠れたりもする。静かな環境さえ用意してやれば、一家でなかよく暮らす姿が観察できる。大食漢で、何でも良く食べる。今回の発見場所では5家族ほどが見られた。

ケショウハゼ 学名Oplopomus oplopomus


採集地:鹿児島県 採集日:2004年10月26日


採集地の状況:泥地 水深50cm サイズ:4cm


撮影者:荒俣宏 Fish Databases of Japan >>
国内9機関のタイプ標本および7機関による25万件の標本を検索することができます。


スズキ目-Perciformes 掲載日2004年11月28日
ハゼ科-Gobiidae


砂を口に咥えて運ぶ

左と同じ個体
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 前記(下)したカスリハゼの1種と同一場所で採集した。ここはわずかに河川の水が流れこむが、ほとんど完全な海水域である。『日本のハゼ』では西表島しか生息域が挙げられていないが、写真のとおり奄美大島にも分布することが確認された。穴を掘ってその周辺でホバリングしており、共生ハゼとは同居していないようだ。採集して水槽にいれると、さっそく小石を口でくわえて巣つくりを開始する。奄美では小さい個体が多く、最大でも4cmを超えない。鰓蓋の下部に大きな黒班があり、本種の特徴になっている。現地では、ハゴロモハゼやカスリハゼ類似種に比べ、生息数がすくなく、シマオリハゼと同数ほど。この湾内では5匹程度しか見かけなかった。きわめて神経質で、接近することはむずかしい。おそらく奄美大島の泥底にはもっと多くのハゼが生息するものと考えられるので、2005年春に詳しい調査を実施する予定である。

サラサハゼ属の1種 学名Amblygobius sp.1


採集地:鹿児島県 採集日:2004年10月26日


採集地の状況:泥地 水深50cm サイズ:2cm


撮影者:写真左 荒俣宏 写真右 さとう俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年11月26日
ハゼ科-Gobiidae

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 鈴木寿之・渋川浩一解説『日本のハゼ』(平凡社)は、未記載種ハゼの同定に苦渋してきた採集家にとって、まことに有益な図鑑だが、同書に掲載されている未記載種を、奄美大島南部の浅い泥底で採集したので報告したい。
 採集現場は湾奥の水深50cmほどの浅場。干潮時は陸化する場所であり、崖になった陸側からわずかな淡水が流れこむ。泥の柔らかい場所では脚を取られて歩けなくなるところである。これまでは魚の気配がないため見過ごしてきたが、今回は台風のため他の磯に入れず、しかたなく浅い泥場を観察することにした。しかし、驚くべきことに、このような濁った泥場に多くのハゼが生息していた。オイランハゼ、タカノハハゼ、ハゴロモハゼとともに、これまで見かけたことのなかった ホホベニサラサハゼ類似種、ケショウハゼ、シマオリハゼ、そしてこのカスリハゼ類似種を確認。カスリハゼ類似種は、『日本のハゼ』にある「カスリハゼの1種」と同一種であった。このハゼは奄美大島南部にひろがる泥底の海岸に普通にみられ、本来のカスリハゼよりも生息数が圧倒的に多い。むしろ、ただしくカスリハゼと確認できる個体を探すほうが困難といえる状況である。地味な色のテッポウエビと共生し、黄化個体も確認できた。
 10月では1cm以下の稚魚から5cmの成魚までたくさん見られる。フィールドではきわめて臆病で、接近するとすぐに穴に逃げ込む。しかし、大きい個体は背びれを立てると実にみごとで、しばし見とれてしまうほどすばらしい。水槽内では乱暴な同居魚さえいなければ丈夫で長生きする。テッポウエビがいればさらに良い飼育環境がつくれるが、いなくとも元気に成長する。いずれ、本来のカスリハゼが同書で得られたら報告する。

カスリハゼ属の1種 学名:Mahidolia sp.1


採集地:鹿児島県 採集日:2004年10月26日


採集地の状況:泥地 水深50cm サイズ:4cm


撮影者:荒俣宏(現場水中写真) Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年11月08日
ブダイ科-Scaridae


平時

警戒色
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 ヤマケイ「日本の海水魚」に記述されているとおり、比較的濁りのある砂泥域で採集した個体。体側中央を縦走する赤いラインは、濁った水中でも良く目立つ。ホバリングをしながら直線的に進むのは、他のブダイ類に共通する。ブダイ特有の表情をもついっぽう、配色パターンと体型からはベラに近い印象を受ける。写真は撮影用接写ケースに入れて撮影したもので、右は警戒色。成魚はブダイ類中最高の刺身になるという。

キツネブダイ 学名Hipposcarus longiceps


採集地:鹿児島県 採集日:2004年10月25日


採集地の状況:泥地 水深1m サイズ:4cm


撮影者:写真左 荒俣宏  写真右 さとう俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年10月12日
チョウチョウウオ科-Chaetodontidae 更新日2005年02月12日

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 稀種ツキチョウチョウウオの報があってまもなく、今度はツキチョウチョウウオとチョウハンのハイブリッドの可能性が高い個体が採集された。体色、斑紋がどのように変異していくのか、おおいに興味をそそられる。ぜひとも成長過程を写真におさめていただきたい。


2005年1月23日現在の画像。背鰭の眼状斑はほぼ消失している。拡大画像の吻端部も参照してほしい。わずかではあるが、属名「カエトドン」の由来となった刷毛状の歯を見てとることができる。(写真:さとう俊 協力:松浦勉)

ツキチョウチョウウオ+チョウハン 学名Chaetodon sp.


採集地:静岡県 採集日:2004年10月2日


採集地の状況:磯 サイズ:5cm


撮影者:松浦 勉 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年9月29日
チョウチョウウオ科-Chaetodontidae


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 本年における外房はいまひとつパッとしない状況だが、ツキチョウチョウウオ採集の報があったのでお知らせしたい。
 採集者の2名によれば、
 「水深約30cmのタイドプールで、ナミチョウのつもりで水につからず採集した。網の中であらためてみたところ、『ツキチョウチョウウオ』であることがわかった。」
 という。採集もいたって容易で、プール内にあった塩ビパイプに入ったところを捕らえたそうだ。
 両名ともいわゆる一般的な採集家だが、本書が指摘した
・潜らずとも珍魚・美魚にめぐりあえる!
を実践した快挙である。磯では、普段着でも自然の懐の深さを知ることができるのだ。

(本書参照頁:P79)

ツキチョウチョウウオ 学名Chaetodon wiebeli


採集地:千葉県 採集日:2004年9月15日


採集地の状況:タイドプール 水深30cm サイズ:4.5cm


撮影者:荒俣 幸男 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年9月23日
キントキダイ科-Priacanthidae

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 都内の鮮魚店に並んだ鰯の中に混じっていたチカメキントキの稚魚。
 銚子沖の巻き網漁で鰯とともに採集され、鮮魚店まで運ばれてきたものだろう。右の爪楊枝、左下に見える一円玉からおおよそのサイズを察して欲しい。

チカメキントキ 学名Cookeolus boops


採集地:銚子沖 採集日:2004年7月28日


採集地の状況 サイズ:2cm


撮影者:友野 政一、政秀 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年9月11日
タナバタウオ科-Plesiopidae

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 リーフエッジの岩壁にできた穴や洞窟内に生息する。普段はダイバーでなければ行けないような場所でも、春の大潮どきの最干潮時なら出会えるチャンスは十分にある。
 逆さの姿勢で泳いでいることが多く、人の気配を察するとたちまちのうちに棲家に隠れてしまうが、しばらく待てば何事もなかったように姿をあらわす。写真は水深1mまで接近してきたときに、岩上で腹ばいになりながらデジタルカメラで捉えたもの。意外に近くまで寄ってきたのには大いに驚いた。
 やや深みにいるときは黒紫色に見えるが、光の当たり具合によっては鮮やかな藍色を呈し大変に美しい。尾鰭が深く二叉するさまもスマートだ。
 

ツバメタナバタウオ 学名Assessor randalli


採集地:沖縄県 採集日:2004年5月8日


採集地の状況:リーフエッジ 水深1.5m サイズ:4cm


撮影者:さとう 俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年9月2日
ハゼ科-Gobiidae

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 奄美大島で採集したベニハゼ属の一種。
 あまりに小さいため、採集した当初はイソハゼの仲間と勘違いし、あやうくリリースするところだった。しかし一見して赤く、他種とは明確に区別できたため、網に顔を突っ込ようにして確認したところ、種の同定はできなかったものの、Trimma属の一種であることがわかった。
 いうまでもなくVIP待遇で持ち帰り、神奈川県立生命の星地球博物館瀬能先生に画像を送付し同定を依頼したところ、
 「未記載種だが、ダイバーが潜水する水深帯にふつうに見られ、かなり以前から各地で撮影・採集されている」
というご返事をいただいた。
 林公義先生の快著「ハゼガイドブック」によれば、ベニハゼ属の多くは水深10m以深の深い水域で採集・観察されており、今回のような浅い水深での採集はきわめて珍しいと思われる。海外にはよく似た別種(Trimma lantana)がいる。
 

ベニハゼの一種 学名Trimma sp.


採集地:鹿児島県 採集日:2004年7月5日


採集地の状況:海岸際の岩礁域 水深1m サイズ:1cm


撮影者:さとう 俊 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年8月26日
ハゼ科-Gobiidae

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 顔つきや体型はオヨギイソハゼに似るが、オヨギイソハゼのように大きな群れは形成しない。両種とも同じ範囲に見られるものの、本種は底近く、他方は枝状や塊状のサンゴの周辺と、明瞭に住み分けをしているようだ。
 遊泳性のハゼとされるが、常に泳いでいるとは限らず、「サキブトミル」や「ハマエダサンゴ」の枝上で静止している姿もよく見られる。体側に走る暗赤紫色縦帯は、水中では青みを帯びて見え、たいへんに美しい。
 本種をはじめとした遊泳性のハゼは、取り扱いに細心の注意を要する。水から出さぬように、コップなどですくって移動させるのがベストだ。
 飼育に難はないが、攻撃性の強い魚との混泳は避けたい。オーバーフローの落ち口から濾過槽に落下してしまうことが多く、本水槽で観察したい場合は、ストレーナーなどの手当てが必要となる。

ソメワケイソハゼ 学名Eviota nigriventris


採集地:鹿児島県 採集日:2004年7月5日


採集地の状況:泥地 サンゴ周辺 水深3m サイズ:2.5cm


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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年8月17日
ハゼ科-Gobiidae

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 2004年7月下旬の大阪湾は、貧酸素水塊が現れてたらしい状況で、数メートル以深の底にすむ魚が水面に浮いてきている。いつもなら石をどかさないと、みつからないような底物がたくさん、ごく浅居場所にある岩の上や岸壁の水面近くに集まっている。イトヒキハゼはこれまで浅場で見たことのない種であるが、今回生態が発見された。ドロメの成魚が2〜30匹の群れで水面の方に向き泳いでいた中に、イトヒキハゼが紛れ込んでいた。最初、網を近づけたところ、底の方に逃げたものの、しばらくすると、また水面近くに現れたので、慎重に網ではさんで採集に成功。また、もう1匹別の個体も水面下でみつけたが、ドロメに攻撃されており、胸鰭、腹鰭がボロボロでかなり弱っていた。二匹とも採集し、30cm水槽で飼育を始めた。状態のいい方は3日目にアサリの切り身を口もとに近づけると摂餌し、弱っていた方もその翌日にアサリを食べ始めた。水槽内では、状態の良い大きい方は、常に砂利の上に出ていて、同居するツムギハゼを威嚇しはじめた。弱っていた方は大きい貝殻の下や、テッポウエビの掘った石の下の隙間に入りこみ、ほとんど姿を見せない。しかし空腹になると、顔を出すようになった。しばらくしてから、一緒に入っていたギマやコショウダイ、カワハギ、ウマズラなどの稚魚が消えた。おそらくイトヒキハゼが犯人だと思われる。水槽内に網を入れると素早く逃げ回り、飛び出してしまうこともので、おどかさないことが肝要。静岡県の砂浜では、投げ釣りで本種を入手できると聞く。試してみる予定である。

イトヒキハゼ 学名Cryptocentrus filifer


採集地:大阪湾 採集日:2004年7月25日


採集地の状況:海岸際の水面下 サイズ:12cm


撮影者:新野 大 Fish Databases of Japan >>
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スズキ目-Perciformes 掲載日2004年8月3日
ベラ科-Labridae

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 イラ属タキベラ亜科のベラ。2004年初夏に奄美大島の内湾最奥部で、水深約50cmに密生するミルやハマエダサンゴの枝上をホバリングしていたところを採集した。せまい範囲に、ほぼ同じサイズの個体が複数見られたことから、幼魚はこの時期に多く出現するものと推測される。
 動きがスローモーなため、採集は非常に容易。砂にもぐるタイプではないので、飼育する場合には隠れ場所が必要となる。
 われわれにとって初採集の魚種であったため、当初は同じタキベラ亜科のシロクラベラChoerodon schoenleinii(Valenciennes, 1839) 幼魚と勘違いした。成魚では暗褐色の体側中央に黄色の楔(くさび)型模様が入る。和名はここからきたと思われる。英名はOrange-dotted tuskfish(tuskは牙の意)。Tuskfishはイラ属の総称で、吻部にある犬歯状の歯を牙に見立てたもの。

 全長40cm。

クサビベラ 学名Choerodon anchorago


採集地:鹿児島県 採集日:2004年7月5日


採集地の状況:泥地 サンゴ周辺 水深50cm サイズ:1.5cm


撮影者:さとう俊 Fish Databases of Japan >>
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