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◇ 照明とシャッタースピードと絞り

  魚たちの様々な姿態の一瞬を写し撮るためには早いシャッタースピードが要求されます。シャッタースピードを大きく左右している要素は照明(光の量)です。

またシャッタースピードは絞りと密接な関係にあり、一般的な撮影(水槽撮影を含む)で一定の明るさの画像を得ようとすれば、照明/シャッタースピード/絞りのバランスが保たれていなければなりません。

シャッタースピードと絞りの関係は写真撮影の基礎となる項目ですが、直感的に判るシャッタースピードと比べると絞りはなかなか理解しにくいものです。普段目にすることのない絞りについては理解し易いようにイメージ図を作成しましたので参考にして下さい。( このページの下方、絞りについて

強烈な太陽の元で普通に撮影する場合はシャッタースピードや絞りについてほとんど意識することはありません。しかし限られた人工照明の元では、照明/シャッタースピード/絞りの関係を把握していないと「うまく撮れない・・・」ということになってしまいます。さぁ少し考えて理解してみましょう。
 


 (T) ある照明の元でのシャッタースピードと絞りの関係

  AUTO、マニュアルに係らずシャッタースピードと絞りの関係は次のようなステップになります。

@ シャッタースピードを早くしていくと。
 
A 画像は次第に暗くなっていく。
 
B 暗さを補うために絞りは開いていくが。
 
C カメラの持っている最小の絞り値に達する。
 
D これ以降はシャッタースピードと絞りの関係はアンバランスとなり、画像は暗くなる一方。逆にバランスを保とうとすればシャッタースピードは遅くなってしまう。

   

・ AUTOの場合、A〜Bは自動で行われるために意識することはありません。
・ 水槽撮影で避けたいのはDの状態ですが、最も多い撮影状況でもある。
・ 手ブレの起きにくいシャッタースピードをCまでに確保するのがベターです。


上記の関係を、カメラの最小絞り値がF2.4の場合に、明/暗の照明でまとめたのが下記の表。
シャッタースピードの変化と最小絞り値の位置に注目してご覧下さい。

特に暗い照明の場合、手ブレが起きやすいシャッタースピードの状況が起きてきます。

明るい 照明の元での撮影
ステップ @ 〜 B C D
シャッタースピード 1/100秒 1/125秒 1/160秒 1/200秒以上
絞り F3.2 F2.8 F2.4
画像の状態 画像の明るさは同じで手ぶれは起きにくい 左より暗くなる

暗い 照明の元での撮影
ステップ @ 〜 B C D
シャッタースピード 1/30秒 1/60秒 1/80秒 1/100秒以上
絞り F3.2 F2.8 F2.4
画像の状態 画像の明るさは同じだが手ぶれが起きやすい 左より暗くなる



数値は照明やその距離によって変化するため絶対的なものではありません。
  このようにシャッタースピードと絞りの組み合わせで得られる光の量のことを露出と呼びます。


 (U) 一般的な水槽照明の元で要求されるシャッタースピード

  水槽の照明に広く用いられている蛍光灯とメタルハライドランプ(通称:メタハラ)。人間の目にはとても明るく見えるのですが、いざ撮影を始めてみると意外と暗いことが分かります。

下の画像は照明の量を変えて撮影したものです。一定の明るさを得るために、照明が暗いほどシャッタースピードが遅く ( 光をとり込む時間が長く ) なっています。シャッタースピードの変化に着目してご覧下さい。

また、それぞれのシャッタースピードで、動きのあるものをどのように捕らえられるかをエアーポンプから流れ出る泡 ( 左端図の矢印参照 ) で確認できます。併せてご覧下さい。 (画像をクリックすると大きい画像がご覧になれます。)

 
20W (蛍光灯1灯) 40W (蛍光灯2灯) 80W (蛍光灯4灯) 70W(メタハラ1灯)
シャッタースピード
1/6秒
シャッタースピード
1/15秒
シャッタースピード
1/25秒
シャッタースピード
1/50秒
絞り:F2.4 絞り:F2.4 絞り:F2.4 絞り:F2.4
照明の位置は水槽の上部、ホワイトバランス以外は AUTOで撮影。
蛍光灯は散光タイプ、メタハラは直線光タイプなのでメタハラ画像の背景は暗い。
撮影は3脚を使用。
エアーポンプから排出される泡はおおよそ1秒間に50個。
(T)の項での、暗い照明 @〜Cに相当。

  

 

   



シャッタースピードはメタハラの照明下で 1/50秒が確保でき、流れるように見えた泡も単発で静止しているように写すことができました。この状況で存分に撮影ができそうに感じますが、経験的に 1/80秒以下では手ぶれがとても起きやすく、ピンボケの確率が大きくなってしまいます。

 
AUTOや絞り優先の設定で撮影して、画像が流れたりピンボケとなるのは大抵この撮影状況です。
 

 (V) 一般的な水槽照明の元で 1/100秒で撮ってみると


  (U)と同じ照明の下で、手ブレの起こりにくい 1/100 秒で撮ったものが下記の画像です。光の量が少ないほど暗い画像となっています。 (画像をクリックすると大きい画像がご覧になれます。)

 
20W (蛍光灯1灯)
40W (蛍光灯2灯) 80W (蛍光灯4灯) 70W(メタハラ1灯)
絞り:F2.4 絞り:F2.4 絞り:F2.4 絞り:F2.4
  ・ シャッタースピードが 1/100 秒以外は撮影条件は(U)とおなじ。
  ・ (T)の項での、暗い照明 Dに相当。

   

  

   

メタハラの画像は何とか使えそうですが、蛍光灯の画像は暗くなってしまいました。絞り値が最小なので ( 詳しくは 「絞りについて」の項参照 ) カメラ側の対応は限界です。明るく撮るためには照明の数を増やしていくしかありません。

 
暗くなった画像は画像処理ソフトを用いて明るくすることも出来るのですが、明暗の差が大きくて処理をやりすぎると画像が荒れてしまいます。蛍光灯4灯の画像を例にして比較したのが ⇒ コチラです。

 

 (W) 明るい照明の元での撮影


  光の量が少ないとどうしてもシャッタースピードと最小絞り値というのを意識して撮影しなくてはなりませんが、光の量を多くすることによってこれらは解決することができます。

下の画像は2種類の明るさの元で撮ったものです。より明るい照明ではシャッタースピードも絞りも自由度があります。 (画像をクリックすると大きい画像がご覧になれます。)

 
明るい より明るい
シャッタースピード
1/100秒
シャッタースピード
1/125秒
シャッタースピード
1/100秒
シャッタースピード
1/125秒
絞り:F2.4 絞り:F2.4 絞り:F5.6 絞り:F5.0
絞り値が最小に近いので、このシャッタースピードよりさらに早くしていくと徐々に画像は暗くなっていく。 絞り値の最小までには余裕があるので、シャッタースピードをもっと早くすることができる。
  ・(T)の項での、明るい照明 @〜C に相当。


 (X) カメラの内臓フラッシュを使っての撮影

  どうしても明るい照明が確保できない場合は、カメラに内蔵されているフラッシュを使って撮影をすることになりますが、その場合、水槽のガラスに反射するフラッシュの光源が写り込まないように注意しなければなりません。

フラッシュ光源の写り込みを防ぐには、水槽から離れるよりも、ズームを使ってできるだけ近づいたほうが良いのですが、カメラの光源の位置によってその距離に差がでてきます。(下図参照)

この場合、奥にいる魚は写せるけど手前にいる魚は写せない(光源が写り込んで画像が使えない)という状況が起きてくることになるわけです。一度距離の確認をしておくと良いでしょう。

 
本体内臓で可動不可のタイプ 本体内臓でポップアップのタイプ

また、フラッシュで撮影した場合と照明を使って撮影した場合とでは画像の印象が少し変わってきます。
フラッシュの場合は奥まで光が届き見通しの良い画像となり、照明の場合は背景が暗くなる傾向となりますので、このあたり被写体の雰囲気や種類によっては使い分けができそうです。(下図参照)

 
(画像をクリックすると大きい画像がご覧になれます)
フラッシュで撮影した場合 照明の元で撮影した場合



 < 絞りについて >

  絞りは機械的な機構で、数枚の黒い羽(板状)で構成され、光の通過量をコントロールします。レンズとCCDの間にあり普段目にすることはありません。絞りという機構のイメージ図と変化の写真を下図に示しています。

下図はレンズ正面から見た6枚羽構成の絞りの例で、絞り値が大きくなるほど開口面積が狭くなります。

基本的な動作は、光の量が少ないときには ⇒ 絞りは大きく開け、光の量が多いときには ⇒ 絞りは小さく開けます。

 
絞り値 ⇒ F2.4 F4.0 F5.6


   

下図はシャッタースピ−ドを一定に保ち、絞り値を変化させて撮影したものです。絞り値が大きくなる(光の通過量が少ない)ほど画像は暗くなっていきます。  
絞り値 ⇒ F2.4 F4.0 F5.6
シャッタースピード

1/125(秒)に固定

カタログに記載されている最小絞り値(絞り値の一番小さいもの)を開放F値と呼び、これはレンズ自体の明るさで決まってしまいます。そのために絞りをいくら大きく開けてもレンズの明るさ以上になることはありません。明るいレンズが求められる理由がここにあります。

 
 * 実はレンズの口径がある程度大きいカメラなら、絞りを直接見ることができます。
次の方法でやってみましょう。
  マニュアル設定で、シャッタースピードを B(バルブ)か、2秒以上の設定とする。
  露出値を F8 程度にする。
  明るいところでレンズの奥を覗き込んでシャッターをきる。
  シャッターが切れるまでの間に F8の絞りの形になった羽が見えます。

(ページ編集/文 江藤幹夫)